危険物倉庫とは?借りる際に確認すべき法律基準も解説

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危険物倉庫とは、火災や爆発を起こしやすい危険物を保管する倉庫のことですが、消防法などでさまざまな基準が設けられているのをご存じですか?

この記事では危険物に該当するものから、危険物倉庫の基準、借りる際の注意点までわかりやすく解説しています。
危険物であっても一般倉庫で借りられるケースも紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

【目次】

危険物倉庫とは?
危険物に該当するもの
法律で定められた危険物倉庫の基準
通常の貸倉庫で危険物を扱えるケース
危険物倉庫を借りる際のポイント
危険物を倉庫に保管する際は法令と基準の確認を!

危険物倉庫とは?

危険物倉庫とは、文字通り危険物を保管している倉庫のことです。
ここでいう危険物は消防法で定められており、災や爆発の可能性が大きい物質や、消火の困難性が高い物質を指します。

危険物の取扱については、消防法第十条で、以下のように定められています。
指定数量以上の危険物は、貯蔵所(車両に固定されたタンクにおいて危険物を貯蔵し、又は取り扱う貯蔵所(以下「移動タンク貯蔵所」という。)を含む。以下同じ。)以外の場所でこれを貯蔵し、又は製造所、貯蔵所及び取扱所以外の場所でこれを取り扱つてはならない。ただし、所轄消防長又は消防署長の承認を受けて指定数量以上の危険物を十日以内の期間、仮に貯蔵し、又は取り扱う場合は、この限りでない。

引用:消防法第十条

危険物を扱える施設は、以下の3種類であることがわかります。

  • 製造所
  • 貯蔵所
  • 取扱所

これらの施設の違いについて、詳しく解説していきます。

危険物施設の種類

危険物を扱う施設は、危険物の安全性を確保すると同時に、公共の安全性を確保するために消防法に基づいて、厳格な安全基準が設けられています。
危険物施設には「製造所」「貯蔵所」「取扱所」の3種類があり、それぞれ異なる役割があります。

種類役割
製造所危険物を製造するための施設消毒用のアルコール、スプレー缶入りの殺虫剤を生産している工場など
貯蔵所指定数量以上の危険物を保管するための施設屋内貯蔵倉庫、屋外貯蔵所、タンクローリーなど
取扱所危険物を製造しない条件下で指定数量以上の危険物を取り扱うための施設ガソリンスタンド、ボイラー室など

危険物倉庫は、貯蔵所に該当します。
大量の危険物や高圧ガスなどを扱うことから、耐火性や耐水性、避雷設備を備えるなど一般の倉庫と異なり、大変厳しい基準となっています。

危険物に該当するもの

消防法に定められている危険物は、個々の物質の特性や特徴によって下記の6つに分類されています。

類別性質特徴品質
第一類酸化性固体他の物質を酸化させる性質がある。可燃性と混合すると発熱、発火、爆発の危険性がある塩素酸塩類、過塩素酸塩類、無機過酸化物、亜塩素酸塩類、など
第二類可燃性固体着火しやすく、40℃程度の低温でも引火しやすい性質がある。出火しやすく燃焼も速い硫化りん、赤りん、硫黄、鉄粉など
第三類自然発火性物質及び禁水性物質空気や水に触れることによって発火したり、可燃性ガスを出す性質があるカリウム・ナトリウム・アルキルアルミニウム・黄りんなど
第四類引火性液体引火しやすい性質の液体特殊引火物・第一石油類・アルコール類・第二石油類など
第五類自己反応性物質加熱分解などにより低温でも発熱したり、爆発的に反応する固体または液体有機過酸化物・硝酸エステル類・ニトロ化合物・ニトロソ化合物など
第六類酸化性液体そのもの自体は燃焼しないが、他の可燃物の燃焼を促進する性質がある過塩素酸・過酸化水素・硝酸など

参考:消防庁資料「消防法令抜粋」

法律で定められた危険物倉庫の基準

危険物を保管している倉庫では、危険物を安全に扱うだけでなく、万が一の事態にも備えておかなければなりません。
そのため、危険物倉庫には距離や規模・構造などについて法律で定められています。

距離

危険物倉庫には、「保安距離」の確保が法令で義務付けられています。
「保安距離」とは、危険物倉庫で火災や爆発が起こった際に、周辺の建物に影響が及ばないようにするために確保する距離のことです。

保安距離は、以下のように定められています。

保安対象物保安距離
敷地外の住宅10m以上
学校・病院・劇場その他多数の人を収容する施設30m以上
文化財50m以上
高圧ガス施設20m以上
特別高圧架空電線(7,000v~35,000v)水平距離3m以上
特別高圧架空電線(35,000v以上)水平距離5m以上

また、危険物倉庫は「保有空地」と呼ばれる、何もない空間を設けなければなりません。
「保有空地」とは、万が一火災が発生した際に他に燃え移らないようにするための空地のことです。
また、消防隊などによる消火活動に必要な空間でもあります。

保有空地に対する基準は、以下のとおりです。

【壁・柱及び床が耐火構造】

区分空地の幅
指定数量の倍数が5以下0m
指定数量の倍数が5以上10以下1m以上
指定数量の倍数が10以上20以下2m以上
指定数量の倍数が20以上50以下3m以上
指定数量の倍数が50以上200以下4m以上
指定数量の倍数が200以上10m以上

【壁・柱及び床が耐火構造以外】

区分空地の幅
指定数量の倍数が5以下0.5m以上
指定数量の倍数が5以上10以下1.5m以上
指定数量の倍数が10以上20以下3m以上
指定数量の倍数が20以上50以下5m以上
指定数量の倍数が50以上200以下10m以上
指定数量の倍数が200以上15m以上

規模

危険物倉庫の規模は、基本的に軒高が6m未満の平屋建てとし、床面積を1,000平方m以下と定められています。
ただし第二類、又は第四類の危険物のみの保管物の場合は、一定の条件の下、軒高20m未満まで認められます。

構造

危険物倉庫は独立した建物であることとし、火災や爆発が起きた際には最小限のリスクで済むように、以下のような厳しい構造基準が設けられています。

  • 壁・柱・床は耐火構造であること
  • 屋根は不燃材料を使用し、天井を設けないこと
  • 外壁は出入口以外、開口部を有しない壁とすること
  • 窓にガラスを用いる際は、網入りガラスを使用のこと
  • 液状の危険物を取り扱う場合は危険物が浸透しない構造にし、傾斜を付けたうえ、貯留設備を設けること

自治体によっては、さらに詳細な条例を設けているケースがあるので確認が必要です。

土地

土地の用途地域に応じて、危険物倉庫の建設の可否や、貯蔵容量が変わってきます。

「工業地域」と「工業専用地域」は、貯蔵容量に関係なく危険物倉庫を建設できます。
危険物がごくわずかな場合には、「準工業地域」にも建設が可能です。
「第二種住居地域」や「準住居地域」「近隣商業地域」「商業地域」は、非常にわずかな火薬・石油・ガスなどの危険物ならば、自治体に確認のうえ、建設の可能なケースがあります。

消火設備

火災の被害を最小限に抑えるために、消火設備の設置は欠かせません。
「危険物の規制に関する政令」第二十条では、下記のとおり消火設備が第一種から第五種まで分類されています。

種類設備
第一種屋内消火栓設備・屋外消火栓設備
第二種スプリンクラー設備
第三種水蒸気消火設備・水噴霧消火設備・泡消火設備・不活性消火設備・ハロゲン化物消火設備・粉末消火設備
第四種大型消火設備
第五種小型消火設備・水バケツ又は水槽・乾燥砂・膨張ひる石又は膨張真珠岩

火災の種類や設備の特徴によって、必要な消火設備が異なります。
専門家の助言を得るなどしながら、適切な消火設備を設置し、あらゆる火災に対応できる環境を準備する必要があります。

通常の貸倉庫で危険物を扱えるケース

消防法では、指定数量以上の危険物を危険物倉庫で保管することと定められています。
言い換えれば、指定数量未満であれば、一般的な倉庫での保管が可能なのです。

指定数量は危険物の品目によって変わります。
もし保管する危険物が少量なら、一般的な倉庫も検討可能となるので、指定数量を把握しておきましょう。

ただし、指定数量未満の危険物であっても、各市町村条例で規制されているケースもあります。
必ずしも一般的な倉庫で保管できるわけではないので、管轄の消防署での確認が必要です。

危険物倉庫を借りる際のポイント

危険物倉庫を借りる際には、以下の3つのポイントを押さえましょう。

  • 適切な広さの倉庫を選ぶ
  • 郊外で探す
  • 現地調査を行う

適切な広さの倉庫を選ぶ

危険物倉庫を借りるのに重要なポイントは、適切な広さの倉庫を選ぶことです。

倉庫の賃料は、基本的に坪単価での計算になります。
「広いほうが良いだろう」と広すぎる倉庫を借りると、余計な賃料がかかります。

反対にギリギリの広さの倉庫だと、保管・管理・受注・発送などの作業に充分な広さを確保できない可能性があります。
また、将来的に保管したい物品の量が増加する可能性もあるでしょう。

倉庫は年単位の長期契約が多く、気軽に借り換えができません。
また、一度保管した物品を他の倉庫に移動させるのは、危険も費用も労力もかかります。
将来的な見通しを立て、業務に合った適切な広さを選ぶのが、倉庫選びのポイントのひとつです。

関連記事:倉庫の広さを表す坪数とは?賃貸する際の坪単価も解説

郊外で探す

都市部よりも郊外で探したほうが、危険物倉庫の賃料が安くなるのでおすすめです。

都心部は賃料が高い傾向にあり、同じ賃料を払っても借りられる面積が郊外よりも狭くなります。
また、郊外のほうが面積の広い倉庫を見つけやすいでしょう。

ただし自社から離れれば離れるほど、輸送の時間や燃料費がかかるので、その点は注意してください。

関連記事:物流倉庫を利用する際にかかる費用とは?相場を紹介

現地調査を行う

確認が必要なのは、倉庫内だけではありません。
周辺道路と環境の確認も重要です。

確認不足だと、時間帯によっては渋滞が起こる道だった、実際はトラックが入れない道幅だったということが起こりえます
深夜まで作業する、騒音が出る業務の場合、住宅街に近い倉庫だと近隣住民からクレームがくる可能性があります。

現地調査を行い、周辺道路と環境の確認が必要です。

危険物を倉庫に保管する際は法令と基準の確認を!

火災や爆発などのリスクを持つ危険物には、厳しく定められた法令と基準にのっとった危険物倉庫などでの保管・管理が必要です。
また、倉庫選びの際には法令の順守だけでなく、周辺の道路や環境なども重要なポイントになります。

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この記事の監修者

一般社団法人にっぽん福福
代表理事

福本 浩一

略歴

3歳の頃に両親が離婚し、母親のもとで妹と3人で暮らす。その後、母方の祖父が経営するバッティングセンターで幼少期よりお手伝いをする。
その頃に祖父から『子どもは宝』と教えてもらい地域の子ども達に喜ばれる貢献活動をすることの大切さを学ぶ。
大学卒業後、大手不動産会社へ入社。不動産業を学んだ後に、祖父の経営する会社へ入社。同時に青年会議所に入会する。
青年会議所で社会貢献や地域貢献について学び、祖父の経営する会社でも営業の傍ら社会貢献や地域貢献活動に尽力する。
社会貢献活動を通じて「他の企業にも社会貢献の重要性を広めたい」「社会貢献が当たり前」な社会を実現したいと考え、一般社団法人にっぽん福福を設立する。

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